認知症のサイン

認知症の人としっかり向き合い、お互いに理解を深めていくことが大切です。

自覚のない本人に受診を勧めるには

受診拒否はなぜ起きるのか

家族に認知症が疑われる場合、最初に越えなければならないのが「医療機関への受診」というハードルです。ストレートに「認知症かもしれないから病院に行きましょう」といって、素直に受診してくれればよいですが、そう簡単にはいかない場合も少なくありません。場合によっては、認知症といわれたことに怒ってしまい、受診を断固拒否することもあります。では、なぜ受診拒否は起きるのでしょうか? 個人差はありますが、次のような気持ちが受診拒否に繋がっているのではないかと考えられています。

○病院に行く理由がわからない

認知症が疑われる人のなかには、「自分でも違和感はあるけど、認知症というほどではない」という人がいます。そういった人に受診を勧めても「ボケているというのか!」と拒否されてしまいます。

○認知症と診断されるのが怖い

ある程度自分でも症状に気づいている人の場合、「認知症である」という事実をはっきりとさせることが怖くて受診を拒否することがあります。認知症になるというのは、本人にとって非常につらいことです。早く検査したほうがよいとわかっていても、受診という一歩が踏み出せなくなります。

○プライドや尊厳を傷つける相手には従いたくない

高齢者は、これまで家庭や社会を支えてきた人たちです。そうした人たちが、子どもなどから「もう! 認知症じゃないの?!」と指摘されればプライドが傷つきます。本人が認知症への疑念を抱いていた場合にはなおさらで、不安が高じているところに親しいからこその遠慮がない言葉で指摘をされれば、深く心が傷つきます。場合によっては家族を敵のように思うようになり、なにをいわれても反発するようになります。

受診を勧めるときのポイント

認知症が疑われる人に受診を勧める場合、できるだけ本人が受け入れやすいように配慮することが大切です。次のポイントを参考に、相手に合った方法を考えてみましょう。

○本人の状態や気持ちを理解する

認知症が疑われる人の多くは、「何かおかしい」という思いから、不安で敏感になっています。本人の不安に寄り添い、理解することから始めましょう。本人と直接話す際は、「否定しない」「怒らない」ことが大切です。
まずは聞き手にまわり、どのような違和感や不安があるのかに耳を傾けてください。相手が話したがらない場合でも無理に聞き出そうとせず、「何か困っていることはない?」と、ときどき声をかけましょう。

○できるだけ嘘をつかない

基本的に嘘をついて無理やり受診させるのはよくありません。「自分の受診に付き添ってほしい」などと嘘をついて受診させると、本人はその人に対して不信感を抱くようになります。一度崩れた信頼関係はなかなか元に戻らず、その後の療養生活にも大きく影響します。「よくなるもの忘れもあるから診てもらおう」とか「治療で進行を遅らせることができるかもしれないので受診して」などのように、本当の理由、本心を話しましょう。

○他人から話してもらう

認知症が疑われる人のなかには、家族に対しては甘えが出たり、意地を張ってしまったりという人もいます。そういう場合には、本人が話を聞きやすそうな第三者から受診を勧めてもらうのも有効です。かかりつけの医療機関がある場合には、かかりつけ医から話してもらうとよいかもしれません。

どこを受診すればいいの?

認知症の診療科としては、「脳神経内科」「脳神経外科」「老年科」「精神科」などが一般的です。かかりつけ医を受診し、そこから専門医へ紹介してもらうのがよいと思います。
また、日本認知症学会や日本老年精神医学会では認知症の専門医を認定しています。それぞれの学会のホームページから専門医がいる医療機関を探すことができます。
ほかにも、各都道府県に設置されている「認知症疾患医療センター」や「地域包括支援センター」「自治体の高齢福祉課」などに相談する方法もあります。

監修 東京大学大学院医学系研究科
   老年病学 准教授
   小川 純人 先生

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