認知症の種類

アルツハイマー型認知症

認知症にはいくつかの種類があります。アルツハイマー型認知症は、日本人に最も多い認知症で、記憶障害などの症状がゆっくり進行します。

アルツハイマー型認知症とは?

脳のなかには、約1,000億個の神経細胞があるといわれています。神経細胞というのは、情報を伝えたり処理したりする細胞で、考える、覚える、理解するといった脳の働きは、神経細胞の働きがもとになっています。アルツハイマー型認知症は、こうした神経細胞がダメージを受けて少なくなり、脳が萎縮する病気です。神経細胞が減少することで、脳のもつ認知機能が低下し、日常生活にさまざまな問題が発生します。
アルツハイマー型認知症は、日本人の認知症の原因として最も多く、2013年に発表された研究では、認知症の人の67.6%がアルツハイマー型であったと報告されています。若い人に発症することもありますが、ほとんどは65歳以上の高齢者で、男性よりも女性に多い傾向があるといわれています。

厚生労働科学研究費補助金認知症対策総合研究事業 都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応 平成23〜24年度総合研究報告書:2013より作図

アルツハイマー型認知症の原因

これまでの研究で、アルツハイマー型認知症が神経細胞の減少によって起きることは明らかになっています。しかし、神経細胞の減少がなぜ起きるのかについては、まだ解明されていません。いくつかの説があり、現在も研究が続いています。
そのなかで、これまで最も有力とされてきたのが、アミロイドβというタンパク質が原因であるとする説(アミロイドβ仮説)です。アミロイドβ仮説では、脳のなかにアミロイドβという特殊なタンパク質が蓄積し、その毒性によって神経細胞がダメージを受け、減少すると考えられています。このほかにも近年ではタウタンパクというタンパク質の影響も指摘されるようになってきています。

アルツハイマー型認知症の症状

アルツハイマー型認知症の場合、神経細胞の減少が、記憶をつかさどる「海馬(かいば)」という部位の近くから始まります。そのため症状も記憶障害が中心で、進行するにつれてそのほかの障害がでてくるのが特徴です。アルツハイマー型認知症の代表的な症状には次のようなものがあります。

○記憶障害

最初は、少し前の記憶が抜け落ちるようになり、ものをどこに置いたか忘れる、同じ質問を繰り返す、昨日外出したこと忘れるなどの症状がでます。進行すると昔の出来事や直前にあったことも思い出せなくなり、「1週間は7日である」というような一般常識や、自転車に乗るなど体で覚えたことも忘れてしまいます。

○見当識(けんとうしき)障害

見当識障害の見当識とは、「今日は何月何日か」「ここはどこか」「あの人は誰か」のように、状況や人物などを正しく認識する能力のことです。アルツハイマー型認知症では、日にちや曜日がわからなくなり、そこから場所、人へと見当識障害が拡大していきます。最終的には配偶者や子どもを自分の家族とわからなくなることもあります。

○遂行(すいこう)機能障害

人間には「目的に向けて計画を立て、それを段取りよく実行する能力」があります。これを遂行機能といいます。アルツハイマー型認知症になると、この遂行機能が障害され、要領が悪くなります。さらに進行すると、日常生活に必要な作業も自分一人ではできないようになってしまいます。

○視空間機能障害

視空間機能障害とは、もの同士の位置関係や、自分とものとの位置関係がわからなくなることです。アルツハイマー型認知症が進行すると、近所であっても自宅に帰れなくなったり、自宅のなかでも迷ったりするようになります。

○その他

その他にも「言葉を思いだしたり、理解したりするのが困難になる(言語障害)」や「使い慣れた物品や道具がうまく使えなくなる(失行)」などの症状があります。

緩やかに進行する病気です

アルツハイマー型認知症は、全く症状のないところから始まり、とても緩やかに進行します。病気の進行スピードや症状には個人差がありますが、最初はもの忘れや同じことを何度も尋ねるようなり、その後買い物や服薬管理などができなくなります。さらに進行すると、「ここはどこか」「自分が卒業した学校」「住所」なども思いだせなくなり、人によっては怒りっぽくなることもあります。最も進行した場合、周囲の人との意思疎通が困難になります。

監修 東京大学大学院医学系研究科
   老年病学 准教授
   小川 純人 先生

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