認知症の治療
早期発見を心がけましょう
早期に治療を開始することで、改善や進行を抑えたりできる場合があります。
早期発見の重要性
認知症といわれると絶望的に感じる人がいるかもしれませんが、そんなことはありません。認知症のなかには治療をすることで治るものもありますし、根本的な治療が難しい認知症であっても、症状をコントロールしながら自分らしく暮らし続けている人はたくさんいます。
その鍵を握るのが病気の早期発見です。
【早期発見のメリット】
○早期に発見することで治せる認知症があります
認知症には、大きく分けて「脳の神経細胞が修復不能になってしまうタイプ」と「圧迫や炎症の影響で一時的に脳の機能に障害が生じているタイプ」があります。前者の場合は、大きなダメージを受けた神経細胞を元に戻すことはできないので、その部分の脳の機能は戻りません。これに対し、後者の場合は、圧迫や炎症の原因になっているものを取り除くことで、治せる可能性があります。
ただし、発見が遅れ、治療のタイミングを逸してしまうと治すことは難しくなります。
だからこそ、認知症を疑ったら、できるだけ早く受診して、適切な治療を受けることが重要です。
治る可能性のある認知症
・正常圧水頭症 | ・慢性硬膜化血腫 |
・髄膜炎・脳炎 | ・甲状腺機能低下症 |
・ビタミンB12欠乏症 | ・葉酸欠乏症 など |
○症状の進行を抑えることができます
認知症のなかでも、患者数の多いアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症は、残念ながら現在では根本的な治療法はありません。しかし、薬やリハビリテーションなどによって症状の進行を遅らせたり、生活習慣を見直して認知症が重症化するリスクを減らしたりすることは可能です。また血管性認知症の場合には、脳卒中の再発予防をすることで、認知機能の低下を防げる場合もあります。自立した生活を長く続けていくためには、早期発見・早期治療が大切です。
○今後に向けた準備ができます
認知症になっても、自分らしい生活を続けたい。それは認知症を抱える多くの人の願いです。家族にとっても、本人がその人らしく生きてくれることは嬉しいことでしょう。そんな自分らしい生活を実現するためには、ちょっとした準備が必要です。
・認知症であることを受け入れること
認知症と診断された本人や家族は、「これからどうなるのだろう」と大きなショックを受けます。しかし、認知症とともに生きていくには、まずは、認知症という現実と向き合い、気持ちの整理をつけることが大切です。
・認知症という病気を理解すること
認知症という言葉は広く知られていますが、その具体的な症状、経過などは意外と誤解されている部分も多いようです。認知症の人と家族がよい関係を続けていくためには、「認知症がどのような病気でどういった経過をたどるのか」「本人や家族は何に気をつければよいか」などを正しく理解することが不可欠です。
・情報を集め、人やサービスとつながること
認知症を専門とする医師、訪問看護や通所リハビリテーションなどの介護サービス、行政の提供するサービスや制度、認知症カフェ、家族会など、世のなかには認知症の人や家族の支えになるものがたくさんあります。多くの情報を集め、必要な人やサービスとつながっておくことは、認知症とともに生きるうえでとても助けになります。
認知症がかなり進行してから、急にこうした準備を進めるのは大変です。その後の人生をよりよく過ごすためも、できるだけ早く認知症を発見し、対応することが大切なのです。
○認知症に気づくポイントについてはこちら
○家族に受診を勧めるときのポイントについてはこちら
監修 東京大学大学院医学系研究科
老年病学 准教授
小川 純人 先生