認知症の種類
血管性認知症
認知症にはいくつかの種類があります。
血管性認知症は脳梗塞や脳出血などが原因で発生します。健康的な生活習慣を続けることである程度予防が可能です。
血管性認知症とは?
血管性認知症は、主に脳卒中によって引き起こされる認知症です。脳卒中というのは、脳の血管が詰まったり破れたりして、脳が障害を受ける病気のことで、脳の血管が詰まる病気に「脳梗塞」、脳の血管が破れる病気に「脳出血」や「くも膜下出血」があります。脳卒中が脳のどこに、どのくらいの範囲に発生したのかによって、病後の経過は異なります。そのため、血管性認知症の症状も、脳卒中の発生した場所や程度によって大きく異なります。
比較的高齢者に多い病気ですが、30〜40代の働き盛り世代がなることもあります。脳卒中は女性より男性の発症が多いため、血管性認知症も同じ傾向があります。
なお、血管性認知症はアルツハイマー型認知症と併発することが多く、このように2つ以上の原因による認知症を混合型認知症といいます。
血管性認知症の原因
血管性認知症の主な原因は脳卒中です。脳梗塞になり、脳の血管が詰まると、その先にある神経細胞に血液が流れなくなり、神経細胞が壊れてしまいます。脳出血やくも膜下出血の場合も同じで、流れ出た血液によって神経細胞が圧迫され、壊れます。こうして壊れた神経細胞が認知機能に影響を与えるものであれば、血管性認知症が発症します。血管性認知症には、1回の脳卒中で起きるものから、小さい脳卒中が多発して発症するものまで、さまざまな種類があります。
血管性認知症の症状
脳卒中が発症した場所によって症状に多少の違いはありますが、一般的に血管性認知症には次のような症状が出るといわれています。
○認知機能障害
アルツハイマー型認知症と同様に、「同じことを何度も聞く(記憶障害)」「言葉がうまく出てこない(言語障害)」「ぼんやりしてミスが増える(注意力の低下)」「時間や場所がわからない(見当識障害)」「計画的に物事をこなせなくなる(遂行機能障害)」「近所から自宅に帰れなくなる(視空間機能障害)」などの認知機能障害がみられます。
○麻痺などの神経症状
比較的早い段階から、「手が麻痺して動かしづらい(運動麻痺)」「言葉はわかっていてもうまく発音できない(構音障害)」「ものが飲み込みづらい(嚥下障害)」などの神経症状がみられます。
○その他
その他には、感情表現が乏しくなる、うつ状態になる、意欲がなくなる、排尿障害(頻尿や尿失禁など)になる、感情がコントロールできないようになるなどの症状を伴うこともあります。
血管性認知症の特徴
血管性認知症にはアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症にはない、3つの特徴があります。
○まだら認知症
まだら認知症とは、「同じことを何度も聞くようになったけど、文章理解や計算はしっかりできる」というように、障害のある部分とない部分の差が大きい認知症をいい、血管性認知症では、障害された部分以外の認知機能は正常なため、認知症であると気づきにくい場合があります。
○予防可能な認知症
アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症に対する予防法は、まだ確立していません。これに対し血管性認知症は、脳卒中そのものを予防することが血管性認知症の予防にも通じます。
○階段状に認知機能が低下
アルツハイマー型認知症がゆっくりと進行するのに対し、血管性認知症の場合は、脳卒中を発症するたびに認知機能が階段状に低下することが多いです。
監修 東京大学大学院医学系研究科
老年病学 教授
小川 純人 先生
この記事は2021年11月現在の情報となります。