認知症の検査
画像検査
治療可能な認知症かどうかを見極める検査と、認知症のタイプを調べる検査の2種類があります。
画像検査の意味
認知症には、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、血管性認知症、正常圧水頭症などがあります。画像検査では、認知症のタイプを調べたり、ほかの病気と見分けたりします。
認知症の画像検査には「脳の形態をみる検査」と「脳の機能をみる検査」の2種類があります。それぞれどんな検査かみてみましょう。
脳の形態をみる検査
認知症の診断では、治療可能な病気を見逃さないことが大切です。例えば、頭のなかに血液がたまる「慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)」や髄液(ずいえき)がたまる「正常圧水頭症(せいじょうあつすいとうしょう)」の場合では、早期に発見してたまった血液や髄液を取り除けば、かなり認知機能が回復することがあります。「脳腫瘍」の場合も同じで、腫瘍のできた場所や状態によっては手術で腫瘍を取り除くことで認知機能を改善することがあります。MRIやCTを使った検査では、主にこうした「治せる認知症」なのかどうかを見極めるために行われます。
MRIやCTは磁気や放射線を使って体の断面をみる装置です。体のなかの構造や臓器の形を調べるのが得意で、脳のなかに血液や髄液がたまっていたり、腫瘍があったりすればそれを発見することができます。また、アルツハイマー型認知症などの特徴である海馬※の萎縮を発見できることもあります。
※脳の中にある記憶をつかさどる部位。
なお、MRIは磁気を使った検査であるのに対し、CTは放射線を使って検査を行います。どちらを使っても脳の形態をみることはできますが、認知症の検査にはMRIを使用している医療機関が多いようです。
脳の機能をみる検査
MRIやCTの結果、治せるタイプの認知症ではないことがわかれば、今度は治療方針を決めるために認知症の種類を特定することになります。そのときに活躍するのがSPECT(スペクト)検査やPET(ペット)検査といった脳の機能をみる検査です。
このうちSPECT検査では、脳の各部位の血流状態などが画像としてみえるので、どの部分がどの程度働いているかを知ることができます。認知症の種類によってSPECTの画像の出方には特徴があり、実際の画像と特徴を照らし合わせることで、ある程度認知症のタイプを見極めることが可能です。
PET検査も基本的な仕組みは同じです。認知症の検査としては、ブドウ糖に似た薬を使うFDG-PETや、アミロイドβの有無を調べるアミロイドPET、タウタンパクの有無を調べるタウPETなどが登場していますが、どれもまだ保険適用にはなっていません。(2021年10月現在)
監修 東京大学大学院医学系研究科
老年病学 教授
小川 純人 先生
この記事は2021年11月現在の情報となります。