認知症の検査

脳脊髄液検査

脳脊髄液を採取して検査します。
特定の病気の発見や認知症のタイプの判別に有用です。

脳脊髄液検査ってなに?

脳脊髄液は、脳や脊髄とそれを包む硬膜(こうまく)の間にある液体で、大切な脳や脊髄を衝撃などから守る役割をしています。脳脊髄液検査(のうせきずいえきけんさ)とは、脳脊髄液を採取し分析する検査です。脳脊髄液検査は、認知症の診断において主に2つの目的で行われます。

1つめは特定の病気を確認する目的です。認知症の原因になる病気のなかには、脳脊髄液を調べることで発見できるものがあります。例えば、髄膜炎や脳炎、神経梅毒などです。こうした病気のなかには、治せるものも多く、早期に発見し治療を始めることが大切です。

2つめは、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などの診断を補助する目的です。例えば、アルツハイマー型認知症になると、脳脊髄液のなかの「脳脊髄液アミロイドβタンパク(アミロイドβ42)」という物質が少なくなり、「脳脊髄液総タウタンパク」や「脳脊髄液リン酸化タウタンパク」という物質が多くなるといわれています。こうした脳脊髄液検査の結果と画像検査をはじめとしたほかの検査結果を組み合わせることで、診断の精度が高まります。

現在、一般的な認知症に対する検査として保険適用となっているのは「脳脊髄液リン酸化タウタンパク」のみです。(2021年10月現在)

脳脊髄液検査の流れ

脳脊髄液検査は体への負担がやや大きい検査なので、誰にでも行われるわけではありません。基本的に医師が「検査しても問題ない」と判断し、本人が同意した場合に行われます。通常、次のような流れで行います。

①ベッドに横向きで寝て、背中をできるだけ丸める。
②針を刺す腰の部分を露出する。
③針を刺す部分を消毒し、局部麻酔を注射する。
④麻酔が効いてきたら、第3腰椎と第4腰椎の間もしくは第4腰椎と第5腰椎の間に長い針を刺す。
⑤大人の場合は、10cc前後の髄液を採取後、針を抜く。
⑥1時間程度ベッドの上で安静にする。
安静時間も含め、90分強の時間がかかります。結果の報告は後日です。

アルツハイマー型認知症を防げる時代が来る?

脳脊髄液検査で指標となるアミロイドβ42という物質は、認知症の診断だけでなく、アルツハイマー型認知症の予防にも活用できるのではないかといわれています。実は、これまでの研究でアミロイドβ42は認知症を発症する10年以上前から減少し始めることがわかってきています。症状のない段階でアミロイドβ42を測定すれば、事前にアルツハイマー型認知症になるリスクが高いことに気づける可能性があるのです。さらに、今後は薬の開発についても、発症後ではなく、症状が出る前に焦点を合わせることで、根本的な治療が可能になることが期待されています。

監修 東京大学大学院医学系研究科
   老年病学 教授
   小川 純人 先生

この記事は2021年11月現在の情報となります。

×
第一三共エスファ株式会社の管理外にある
ウェブサイトに移動します。

知りたいがん用語

TOP