それぞれのがんの解説

がんは日本人の2人に1人がかかる病気です。

「がん」とは

どんな病気?

がんになる要因には、喫煙や飲酒、食事、運動などの生活習慣、細菌やウイルスなどの感染、放射線や紫外線などの環境要因などさまざまです。生活習慣に気をつけ、がんの発生にかかわる感染症の予防接種を行うことで防げるがんがある一方、それだけでは防げないがんもまだ多くあります。

がんの始まりは、正常な細胞の遺伝子にいくつかのキズがつくことと考えられています。遺伝子のキズは、長い時間をかけて増えていき、がん細胞へと変化していきます。
いったんがん細胞になってしまうと、無秩序に細胞分裂を繰り返して増殖し、がん細胞のかたまりである「悪性腫瘍=がん」ができます。さらに、増殖を続けると、がんは周囲の組織に食い込むように広がり(浸潤)、離れた場所に飛んで増殖します(転移)。「無秩序な増殖」「浸潤」「転移」が、がんの大きな特徴といえます。

正常な細胞は秩序を保って分裂し、古い細胞と入れ替わっていくためこのようなことは起こりません。また、良性の腫瘍は分裂、増殖してかたまり(腫瘍)ができたとしても、成長が遅かったり途中で止まることで、浸潤や転移はしません。このような「良性腫瘍」は、がんとは分けて考えます。

がんの患者数

日本人の2人に1人ががんになるといわれています。怖い病気ではありますが、身近な病気であるといえます。2018年に新たに診断されたがんは約98万例、女性に比べ男性のほうが多い傾向にあります。
男性では、前立腺がん、胃がん、大腸がん、肺がん、肝臓がんが多く、女性では、乳がん、大腸がん、肺がん、胃がん、子宮がんにかかる人が多くいます。

がんは日本人の死因のトップなので、がんと診断されたら大きな不安を抱くことと思いますが、がんと診断された人が5年後、10年後に生存しているかを表した5年生存率も10年生存率も、過去に比べて向上しています。つまり、がんになっても適切な治療によって人生を歩み続けている人が増えているということになります。

がんは部位や進行度によって治療法や経過が異なります

がんは大きく「固形がん」と「血液がん」に分けられます。さらに固形がんは皮膚や粘膜などの表面の層にできる「癌腫」と筋肉や脂肪、骨・軟骨などにできる「肉腫」とに分けられます。
癌種には、胃がんや肺がん、大腸がん、乳がんなどがあり、肉腫には骨肉腫、横紋筋肉腫などがあります。

がんは最初にがんが発生した部位によって、胃がんや乳がんと診断されます。そして、がんの治療やその後の経過は、部位によって異なります。そのため、現在のがん治療は、部位ごとに治療法が確立しており、それぞれの学会で定めた「ガイドライン」などに沿って治療が行われています。治療法を選択する際には、がんの進行度(病期)を目安にします。国際対がん連合(UICC)によって定められた悪性腫瘍の進行度の指標の1つ「TNM分類」で評価します。「TNM分類」の「T」は最初に発生した部位のがんの広がりや深さを表し、「N」はがん細胞のリンパ節への転移の有無と広がり、「M」は最初にがんが発生した部位から離れた臓器への転移の有無を示します。

ただし、同じがんでも、増殖するスピード、浸潤や転移のしやすさはいろいろです。増殖するスピードが速く、浸潤や転移をしやすいがんは「悪性度が高い」といえます。このようながんの性質は、がん細胞を採取して顕微鏡で調べる「病理検査」で判断します。

日進月歩のがん治療

がんの発生のメカニズム、悪性度などのがんの性質の違いなどがわかるにつれて、治療方法も変わってきました。

遺伝子のなかには、細胞増殖を促す「がん遺伝子」や細胞増殖を止める「がん抑制遺伝子」があります。これらが正常に働いていれば、細胞ががん化することはありません。
しかし、何らかの要因でがん遺伝子に異常が生じると、車でいえばアクセルを踏みっぱなしの暴走状態になり、無秩序に細胞が増殖されていきます。一方、がん抑制遺伝子にキズがつくと、ブレーキが壊れた状態になって、やはり、細胞の無秩序な増殖を止められなくなってしまうのです。
このような異常が遺伝子に生じると、その遺伝子からつくられるタンパク質が変化し、細胞が異常に増殖するということがわかっています。そのタンパク質を標的にした薬による治療は分子標的治療といわれています。

また、私たちのからだに本来備わっている免疫機能を活かす治療法も登場しました。そう遠くない未来にさらに新たな治療法が誕生するかもしれません。

監修 神戸大学医学部附属病院
   腫瘍・血液内科 教授
   腫瘍センター センター長
   南 博信 先生

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