それぞれのがんの解説

大腸がん

「大腸」と「大腸がん」の基礎知識

結腸と直腸を合わせて大腸と呼んでいます。大腸は右下腹部から盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸という順で肛門までつながっています。大腸の長さには個人差がありますが、1.5mから2mほどです。

大腸の主な働きは、小腸で消化吸収されなかった食物の残りに含まれる水分を吸収し、適度な固さの便をつくり排出することです。大腸で水分の吸収が不十分だと軟便や下痢になります。

大腸の壁は、内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)下層、漿膜と呼ばれる層になっており、粘膜に発生したがんは、大きくなるにしたがって外側に向かって広がっていきます。

大腸がんは日本人のがん罹患数の1位

国立がん研究センターが公開している統計情報によると、2018年に新たに大腸がんと診断された数は15万2,254例(男性8万6,414例、女性6万5,840例)。人口10万人あたりの罹患率は120.4例(男性140.4例、女性101.4例)と、日本人に多いがんの1つです。大腸がんの患者数は、男性では50代後半、女性では60代頃から増え始め、その後も右肩上がりに増加していきます。

大腸がんになる要因

大腸がんは生活習慣が発症にかかわっており、赤身肉や加工肉などを多く食べる、飲酒、喫煙などがリスクを高めることがわかっています。そのほか、肥満や高身長の人も高リスクとされています。

大腸がんのなかには遺伝的な要因が指摘されることがあります。近親者に、家族性大腸腺腫症やリンチ症候群の人がいる場合は、早期発見のために定期的な検査をするとよいでしょう。

大腸がんの症状

早期では自覚症状がほとんどありません。進行すると、血便や下血、下痢と便秘を繰り返す、便が細くなる、便が残る感じがする、おなかが張る、腹痛、貧血、体重減少などの症状があらわれます。

血便や下血は痔でもみられるため、痔だと思って放置した結果、発見時には進行していたという事例も少なくありません。

進行してがんが大きくなると、腸閉塞を起こすことがあります。

大腸がんの検査

大腸がんが疑われる場合、まず大腸内視鏡検査を行います。その際に直腸診も行うことがあります。大腸内視鏡検査でポリープなどの病変が見つかった場合、ポリープを採取して病理検査を行います。

大腸がんであると診断されたら、がんの進行度やがん細胞の悪性度などを調べるためCT検査、MRI検査、病理検査などを行い、治療方針を決めていきます。

~~早期発見のための大腸がん検診~~

健康診断などで一般的に行われる大腸がんの検査は便潜血検査(検便)です。便潜血陽性(便に血が混じっている)の場合、精密検査として大腸内視鏡検査を行います。便潜血検査は、科学的に有用であると証明されています。早期の段階でがんが発見されれば、治癒が期待できます。

大腸がんの進行度と治療選択

大腸がんの進行度は、がんの深達度、リンパ節への転移の有無、離れた臓器の転移(遠隔転移)の有無の3つの要素を組み合わせて判断します。進行度は、0期からⅣ期に分けられます。「早期大腸がん」はがんが粘膜および粘膜下層にとどまるもの、「進行大腸がん」は粘膜下層よりも深いものをいいます。

大腸がんの治療法には、内視鏡治療、手術、がん薬物療法、放射線療法があります。がんの進行度、患者さんの年齢やからだの状態などによって治療方針が決定されます。

内視鏡治療は、がんの深達度が粘膜下層までで、リンパ節転移がない場合に選択することが可能です。体への負担が小さく、大腸をすべて残せることがメリットです。

大腸がんで最も多く行われるのが手術療法で、がんができている部分の大腸を広めに切除し、残った大腸をつなぎ合わせます。手術の対象となるのは、0期からⅢ期とⅣ期の一部です。手術には開腹手術と腹腔鏡手術があり、最近はロボット手術による腹腔鏡手術を行う医療機関も増えています。また、リンパ節転移があるなど再発の危険が高いと思われるときは術後に化学療法を追加します。

他臓器への転移があるⅣ期や再発した場合には、がん薬物療法を行います。必要に応じてがん薬物療法と放射線療法を組み合わせることもあります。少数の肝転移は切除することで治癒することもありますので、肝臓を切除することもあります。

~~人工肛門について~~

がんが肛門近くある場合、がんを取り残さないように肛門まで切除することがあります。肛門を切除した場合、おなかに人工肛門(ストーマ)を造設します。人工肛門造設後は、その部分にパウチなどのストーマ装具を装着して排泄の管理をします。人工肛門に対して多くの人が不安を感じることでしょう。しかし、手術後に看護師から教わるストーマケアを練習し、慣れていくことで、多くの人が手術前と同じように生活しています。

監修 神戸大学医学部附属病院
   腫瘍・血液内科 教授
   腫瘍センター センター長
   南 博信 先生

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