それぞれのがんの解説

肺がん

「肺」と「肺がん」の基礎知識

肺は、からだに空気中の酸素を取り入れ、不要になった二酸化炭素と交換するという働きをしています。左右に1つずつあり、右の肺は3つ(上葉、中葉、下葉)、左の肺は2つ(上葉、下葉)に分かれています。

私たちが吸いこんだ空気は、気管を通って左右の気管支に入ります。気管支の先端には「肺胞」という小さな袋がついており、この肺胞で酸素と二酸化炭素の交換が行われています。

肺がんは気管支や肺胞の細胞にでき、がん細胞の特徴から「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」に分けられます。
非小細胞肺がんは、さらに「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」に分けられ、このなかで最も患者数が多いのは腺がんです。
小細胞肺がんは、がん細胞の増殖スピードが速く、転移や再発をしやすいという特徴があります。

肺がんは増加傾向にあります

肺がんの罹患数は男性でも女性でも4番目に多く、増加傾向にあります。国立がん研究センターの公開している統計情報によると、2018年の肺がん診断数は男性8万2,046例、女性4万777例と男性に多く、人口10万人あたりの罹患率は男性133.3例、女性62.8例です。

肺がんになる要因

肺がんは喫煙との関係が深く、喫煙する人は喫煙しない人に比べ、男性で約5倍、女性で約4倍も肺がんになりやすいとされています。本人はたばこを吸わなくても周囲にたばこを吸う人がいるとたばこの煙を吸いこんでしまい、肺がんの発症リスクが高まります。
ほかには、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎といった病気、石綿(アスベスト)、ヒ素、PM2.5などの有害物資、遺伝的素因が肺がんの要因となることがわかっています。

肺がんの症状

主な症状は、咳、痰、血痰、胸の痛み、動いたときの息苦しさのほか、発熱などですが、症状がほとんど出ないこともあり、だからこそ定期的に肺がん検診を受けることが重要になります。

肺がんの検査

現在、肺がん検診として推奨されているのは、胸部エックス線検査と喀痰細胞診(かくたんさいぼうしん)です。
胸部エックス線検査では肺に腫瘍の影がないかどうかを調べます。

喀痰細胞診は重喫煙者が対象で、胸部エックス線検査と組み合わせて行い精密検査が必要かどうかを判断します。
※50歳以上で、「喫煙指数」(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の喫煙者

肺がんの精密検査には、胸部CT検査と気管支鏡検査があります。胸部CT検査では、エックス線を使って胸部の断面図を撮影し、腫瘍のかたちや大きさを詳しく把握します。気管支鏡検査では、内視鏡を気管支に挿入し、がんが疑われる部分を直接みて確認します。内視鏡で組織を採取して病理検査を行います。

肺がんの進行度と治療選択

肺がんの進行度はⅠ期からⅣ期に分けられ、がんの大きさや浸潤の程度と、周辺リンパ節への転移および他臓器への転移(遠隔転移)の状況で判断します。肺がんの進行度は、さらにⅠ期で4つ、Ⅱ期で2つ、Ⅲ期で3つ、Ⅳ期で2つに分類されます。

肺がんの種類と進行度、患者さんの年齢やからだの状態などによって治療方針が決定されます。
手術の対象になるのは、比較的早期の場合で、非小細胞肺がんではⅠ期およびⅡ期、Ⅲ期の一部、小細胞肺がんの場合はⅠ期とⅡ期の一部です。
腫瘍が大きい、浸潤の範囲が広い、遠くのリンパ節や臓器に転移しているという場合では、手術ではなく、がん薬物療法や放射線による治療を行うことになります。遠隔転移がない場合は両者を併用する化学放射線療法を行うこともあります。

〜〜肺がんの手術〜〜

がんのある肺葉をそっくり取る「肺葉切除術」と、肺葉の一部分だけを取る「縮小手術」がありますが、縮小手術は非小細胞肺がんのごく早期の場合などに限られます。
最近は胸腔鏡を使用した胸腔鏡下手術や、開胸しても傷の大きさを最小限に抑え、肉眼と胸腔鏡の画像の両方を確認しながら行う「ハイブリッドVATS(バッツ)」のように傷をなるべく小さくする手術が普及してきました。
どのような手術を行うかは、がんの大きさやがんのある場所、リンパ節転移の範囲などによって異なります。

監修 神戸大学医学部附属病院
   腫瘍・血液内科 教授
   腫瘍センター センター長
   南 博信 先生

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